
納入事例

コンセプト
三重県伊賀市の古い街並みに残る町屋をホテルの客室に改修する計画である.
今回「建物が生き生きと使われていた時代に戻していく」というホテルのコンセプトに基づいて建物への手の入れ方を決めていった.
傾いた蔵はジャッキアップによって補正し、コンロの下に隠れていたオクドさんは当時の暮らしを偲べるように展示した.
囲炉裏の煙抜きは瓦で塞がれていたが、ガラス瓦に交換することによって半世紀ぶりに室内に光を落とした.
建物の歴史に寄り添う手法は、新しく手を入れる部分と古いものとの「差異」にも表れている. 新規の木材は「赤身」に限定することによって新設部分と既存部分とがどことなくまとまった印象を生み出すことを狙った. 広く流通する「白太」によって新旧を際立たせるのでも、「白太」を塗装することによって既存部分と無理に近付けるのでもない、対比と調和のゆらぎの上に空間の秩序を位置づけた.
ここを訪れた人が「新しい部分と古い部分の見分けがつかない」と感じてもらえたらこの試みはうまくいったのではないかと思う.(きりん / 武保学)
木材仕様
床板
杉 巾150㎜×厚15㎜ 赤ム・上 プラネット塗装
階段材
[踏板 蹴込み]杉 赤上小
[側桁(下地)]杉 特一等
他羽目板
ウッドデッキ床板
一部構造材
既存の材が経年変化により濃い色になっている為、新規で施工する床板もテイストを合わせたいというご要望から、色味を合わせて杉の赤身材を採用いただきました。
仕上げにプラネットカラー グロスクリアオイルを塗装。素材の風合い、柔らかさをそのまま活かしながら、かつ撥水性も期待できる自然塗料です。
杉の足触りの柔らかさで、旅の疲れも癒されたらと思い、この塗料をおすすめしました。
階段材も杉の赤身材で製作。
設計者や施工担当の方とお電話で打ち合わせを重ね、こちらで加工図面を製作。踏板のノンスリップ加工や、蹴込を入れるミゾ加工、側板の雛壇加工をさせていただきました。
また今回は平面図・立面図・展開図をいただき、木拾いをしながら、羽目板やデッキ材、一部構造材も合わせてご提案し採用いただきました。