埼玉県新座市に建つ、開院から６０年を数える歯科医院のアネックスをつくる計画である。

 敷地には古くからケヤキが生い茂る森があり、緑豊かな環境の中にクライアント家族の住宅と歯科医院が庭を共有するように建っていた。新たにアネックスが建つと庭を囲む配置関係になるため、住まいへのプライバシーに配慮しながら壁をバラバラと配置し、緑の環境が壁の合間から入り込んでくる建物を考えた。

天井は鈍く反射するアルミを一様に使い、壁には木材やガラス、塗り壁など様々な素材を多用している。ひとつとして同じ表情を持たない木材については、凹凸や働き幅、風合いを変えて質の違いがより引き立つようにした。それは、異素材の重なりが森の四季折々と同じように鮮やかな景色の一部となって、外部と内部が柔らかく混ざり合う環境を意図したためである。

屋根の起伏は大きさの異なる場所をつくり、天井面が移ろいゆく光や色とりどりの素材を映し込んで、診療に訪れた人々の束の間のひと時を彩っている。（山下貴成建築設計事務所 / 山下貴成）