滋賀県長浜市内で10年営んでこられたパン屋さんの新築移転の計画。
建築場所は琵琶湖岸からほど近い一級河川である長浜新川沿いの桜が立ち並ぶロケーションを目の前にして、この景観を借景にすべく、意識が外へ向かって広がるように開口部を配置すると同時に、風の通りを考えて壁の幅と位置を調整して、「囲われながら外に開く」ことを念頭に基本設計をした。
外壁には経年変化を楽しめる自然素材を使いたいが将来のメンテナンスも気になるというクライアントに、水に強くて耐久性に優れる赤身の熊野杉を提案した。
少し粗目の仕上げを施した表面にはクライアント自ら塗装をし、一層愛着が湧くものとなった。
また入口の大きな引戸や通風窓の面材にも同じ杉板を使用し、素朴さとダイナミズムの両立とともに素材感やエイジングスピードの統制を図った。
四季を通して様々な表情の街並みを映すこの場所で、軒に守られながら雨の日や雪の日も長浜の朝へと送り出してくれる、そんなパン屋さんとなった。(玄正建築設計事務所/玄正崇)