納入事例
コンセプト
「古さと新しさを象徴する」
歌川広重が東海道五十三次で描いた鳴海宿内にある相原町での寿司屋の新築。
相原町は旧宿場町時代の町屋が次々とお店をたたんでいき、アパートや月極駐車場に建替えられ現代化が進行している。この町で新しいお店ができるのは20年以上ぶりのことだ。
現代化によって地縁関係や宿場町の町並みといった町の個性は失われ、均質化していく。未来の町の風景を想像すると、寂しくも感じた。
止まらないであろう更新の中で、新しくつくられるお店のあるべき姿を考え、古さ(町の歴史をつなぐこと)と新しさ(現代化)の二つを象徴するような建物が作れないかと考えた。
必要面積と斜線制限からまとめた総2階建ての箱型の外形に、古い町並みのディテールをサンプリング(過去の一部を流用し、再構築して新しいものをつくる技法)し、付加していった。
具体的には、延焼ライン緩和のための防火袖壁と玄関部分の平入りの下屋といった周辺町屋の形状や、板張り外壁と木建具などのディテール、平入り町屋の妻面がつくる切妻形状に加え、建物沿いに残る石積みの水路などをサンプリングしている。石積みについては、基礎掘削時に発掘された埋め立てられていた水路の石積みを建築の足もとに再利用している。
人目を引くような白い抽象的な箱型の外観だが、周辺の古い町並みと連続するような佇まいもある、古さと新しさの両方に接続する建築を目指した。
(鈴木隆介一級建築士事務所/鈴木隆介)
木材仕様
外壁材
桧 巾100mm✕厚み15mm ムジ 本実突付サネ長タイプ 面取り極小
オスモ塗装
外壁がなるべく面一に見えるよう、面取りを通常よりも小さくすることを特殊オーダーとして承りました。加工形状は「本実突付加工サネ長」とし、内装材よりも実を長くとることで雨仕舞いをよくさせた外壁用の特別仕様です。
またその色合いにも拘られ、2色の塗料を調合。耐久性を考慮しながら、桧の風合いを感じる外壁材となりました。
撮影
鈴木隆介