納入事例
伊礼智設計室 伊礼智
コンセプト
「箱根山の風景に向かう」
フジタ第二箱根山マンションのリノベーションである。
1964年に吉村順三氏の設計で完成している。
竣工から57年の間に、メイン開口部の木製建具がアルミサッシュに変更され、温泉の熱を利用した床吹き出し暖房も使えなくなってはいたが、全体としてきれいに保たれており、吉村事務所らしいしっとりしたテイストが残っていた。
特に全体に回した、長押の水平ラインが創り出すプロポーションの心地良さが魅力的であった。
住まい手の要望は、「できるだけ元に戻したい」ということであったので、マンションの6階で風当たりの強いところではあるものの、木製建具の4枚片引きで大開口とし、LOW―Eペアガラスに引き寄せ機能のあるクレセントを使用するなどで断熱と気密性を高めた。
この開口から箱根山の風景を満喫することが、この住まいの宝である。
予算の関係とセカンドハウスということで躯体面の断熱改修はできなかったが、南面のパブリックゾーンは下地からやり直し、空間のプロポーションに関わる長押のあり方は元の設計を踏襲した。
今回は未完成のままだった「たためるソファ」が完成し、配置された。
吉村好みの素材と合わせて、古くて新しい心地良い居場所となったと思う。
(伊礼智設計室 / 伊礼智)
木材仕様
天井板
杉 小幅板風羽目板 赤ム・上 巾125㎜×厚12㎜(4本溝)
もともと桧で製作していた小幅板風羽目板。
伊礼様より「今回は落ち着いた空間にしたい。何か良い方法はないか?」というご相談をいただき、塗装なども検討されていたところ、それならばと杉の赤身材でご提案し製作にいたりました。
杉赤身の渋くコクのある落ち着きが、どこか懐かしさを感じるこの空間にとてもよくなじんでいます。
お客様のイメージを杉や桧で具現化することは、私たちにとって未知の領域であったり、開発段階で試行錯誤や何度も試作品を作ったりと大変な作業もありますが、住まい作りに一緒に参加させて頂いている感じがしてとても嬉しいです。